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とあるブログ記事「「脈状診の研究」に関しての疑問」について
こんばんは、
私は毎年、いくつかの学会で発表しますが、そのうち、1~2回は、脈診に関する研究発表をしています。
脈診を中心に書かれた医書の研究や、症例報告などがその内容です。しかし、いつもほとんど、反応も質問も有りません。
また、実は鍼灸師の中でも、脈診をきっちりやる人は少数です。東洋医学といいながらです。
しかし、たまーに、脈診に対する問題提起を見ることが有ります。その内容がどうあれ嬉しくなります。

 ある治療院のブログに、「「脈状診の研究」に関しての疑問」という文が乗せられていました。

この『脈状診の研究』は1980年に上梓された、井上系経絡治療のバイブルとも言うべき書籍です。
著者の井上雅文は、1940年代に形成された経絡治療が抱えていた課題、「最初に導入した脈診(六部定位診)では、様々な症状に対応出来ない」を、脈拍の様々な状態を診る脈診(脈状診)を取り入れることで、日々、季節ごとに変わる症状に対応させる診察法を考案しました。本書は180ページ弱の本でありながら、その形成過程から完成型の枠組みまでぎっちり詰め込んでいます。
井上系経絡治療をするには、最低限この本をマスターする必要が有りますが、非常に難解です。
何度も読み、先生から解説を受けて、やっと理解出来るといったものです。
(私の先生は、井上雅文に師事し、後に井上系経絡治療の研究会を立ち上げました。この本の成り立ちにも関わりました。)
ここ数年の基礎講座では、私が、この本で確定された診察法を講義しています。

このブログをお書きになった方は、独学でこの本に取り組んでおられるようですが、根気が要る作業です。頭が下がります。

(※ ここからは、さらに専門的になります。失礼します。)

 この方のご意見は、
「『脈論口訣』を根拠に脈状と病証を組み合わせたと言うが、内傷(意識感情や生活動作、加齢による消耗)と外傷(外部の気候や寒暖による消耗)の区別が出来ないではないか」・・とのことかと推察されます。
 この疑問は当然のことで、『脈論口訣』でも、さらに井上系の脈状診である〈人迎気口診〉の根拠となった『三因方』でも、「気口が強ければ内傷、人迎が強ければ外傷」といった説明となっています。

しかし、井上系の人迎気口診は、実脈ではその通りなのですが、虚脈では少し違っています。
それは「湿邪」の典型的な脈状が「沈細(沈小、沈虚)」であり、そこから、井上系人迎気口診では、虚脈においては、人迎が気口より浮いて強い場合(風邪)と、沈んで弱い場合(湿邪)は外傷と設定しました。
しかも、さらに「脈状の遅数や、滑濇の状態によっては内傷と外傷を逆転させる」との設定もあり、より構造的になっています。

・・・ちょっと、きりが有りませんね。
 脈診の本に取り組む方、しかも『脈状診の研究』を勉強されての文章が珍しく、やるべきことを後回しにして、読んで下さっている方たちすら無視し、つらつらと書いてしまいました。

伝統医学的な鍼灸は、実際にはかなり理論的なんです。
鍼灸は、針金一本、もぐさ一つまみに過ぎませんから、今どんな状態かといった診察が実はとても重要なんです。








 
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shinkyuunakagawa

Author:shinkyuunakagawa
京都府右京区西院の鍼灸院です。

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